2020年3月に第1弾を発売して以来、これまでに3冊つくられたムック本『こどもオレンジページ』は、社内公募のメンバーによる「こどもプロジェクト」から生まれました。

親子が一緒に“楽しく食べる”ためのレシピやアイデアを誌面で紹介するだけでなく、企業とのコラボレーション商品を開発したり、アプリをつくったりとさまざまに展開。プロジェクトを立ち上げた経緯や、大事にしている視点について、編集長の清野ゆかり、副編集長の和田有可と長谷川美保、販売・宣伝担当の亀崎麻美に聞きました。

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眠っていた財産をみがき直し、ビジネスにつなげる

—こどもプロジェクトでは『すごいぞ! やさいーズ』という本も扱っていますよね。

清野ゆかり(以下「清野」):『やさいーズ』は「ピーマンブラザーズ」「にんじーなひめ」などのキャラクターから野菜に親しむイラスト図鑑のようなものなんです。亀崎が販促担当で、「うちの子がピーマン食べた!」という声をいただいたり、保育園でもすごく反響があったんだよね?

亀崎麻美(以下「亀崎」):そうそう。今、こどもたちへの食体験の一環として菜園活動をしている保育園も多いので、先生方や栄養士の方からも「勉強になる」と言っていただいたりしています。

この本は2016年に刊行されたのですが、そのときは書店でなかなか需要が見出せませんでした。それが2019年、こどもプロジェクトをきっかけに、試しにうちの子が通う保育園に持って行ったら、あれよあれよという間にこどもたちがキャラクターの名前を言ったり、やさいーズの歌を口ずさんだり、そのテーマ曲の踊りを自分たちで考えて発表したりするようになって。キャラクターを入口にして野菜に興味を持ち、苦手な野菜が食べられるようになったというお声を保護者の方からいただいたりしました。



清野:『やさいーズ』の編集担当の清 繭子もこどもプロジェクトのメンバーです。彼女がこの本をつくったころは、オレンジページのこどもジャンルは世の中にほとんど認知されていなかったし、書店さんでも価値を見出していただけていなかった。隠れていた財産を、こどもプロジェクトが掘り起こし、みがいてみたかたちです。

去年は歌に合わせて踊れるダンス動画をつくって公開し、ダンスコンテストを開催したり、Amazonさんと協業して2種類のアプリも出しました。5年前に発行した1冊の本が今、いろんな部署の事業や外部の企業と組み合わさってビジネスになっている。これってまさに今回、オレンジページの企業ロゴで打ち出した“生活実装”ですよね。そんなふうに、今は『こどもオレンジページ』を通していろんな点と点を結びつけ、面にしている状況です。

左手前から時計回りに、清野ゆかり、亀崎麻美、長谷川美保、和田有可。

包丁から、クイズができる野菜ピューレまで、遊び心がつまったコラボ商品

—これまでは誌面に落とし込むことでしかマネタイズできなかったけれど、誌面に落とし込んだコンテンツが起点になって、別のかたちに展開していけるようになったということですね。

和田有可(以下「和田」):初めに清野がこのプロジェクトを立ち上げたときも、本をつくるだけではなく、本をプラットフォームにしていろんな事業を打ち出していきたいと言っていたんですね。私や長谷川は長く編集畑だったこともあり、新しいことを始められることにワクワクしました。

清野:だからこそ『こどもオレンジページ』は定期刊行物にしていないんです。私たちはSNSもゆるゆる配信なので(笑)、第3号も発売の2週間くらい前に突然情報発信をしたらものすごい反響があって。よかった、待っていてくれる人がいっぱいいた!とうれしくなりました。社外からの反響も大きく、今コラボレーションしたいという問い合わせがすごく多いんですよ。



—これまでにはどんなコラボレーションをしたのですか?

清野:第3号を出すタイミングで、はじめてコラボ商品を発売しました。4社とコラボレーションし、全部で5商品。たとえば老舗の料理道具店、釜浅商店さんは『こどもオレンジページ』を1号めから気にかけてくださり、ついに「なにか一緒にやりましょう!」と、こども用の包丁とまな板をつくりました。

敷島製パンさんとは冷凍のパン生地セットをつくり、Pascoのオンラインショップで販売しています。これは「ちぎりパンをフライパンでつくれるキットがあったらおもしろいね」という雑談から生まれました。さらに、HiO ICE CREAMさんとは、にんじんを使ったアイスクリームと、先方の定番商品であるミルクアイスクリームをオリジナルのパッケージバージョンでつくりました。

和田:the kindestさんとつくったのは「食材クイズ実験セット」です。the kindestさんは離乳食をメインでつくっている企業なのですが、離乳食を終えた世代の子たちに向けてもなにかしたいという想いを持っていて。『こどもオレンジページ』とターゲット層がちょうど重なるうえ、素材にすごくこだわってつくっていらっしゃるところなど、同じところを目指しているようなシンパシーも感じました。
そこから、『こどもオレンジページ』のキラーコンテンツ「キッチン実験室」をヒントに、クイズ感覚で楽しみながらこどもたちの味覚を鍛える野菜のピューレセットが生まれたという流れです。

4社とのコラボ商品。左上から時計回りに、敷島製パンのL’Oven「冷凍生地のフライパンちぎりパンキット」、釜浅商店「こども庖丁」「庖丁にやさしいまな板」、HiO ICE CREAM「にんじんミルク&びえいシングルオリジンミルク」、the kindest「食材クイズ実験セット」。

協業を通してたくさんの“生きるチカラ”を育てていきたい

—「こどもプロジェクト」や『こどもオレンジページ』が提供できる価値とは、どういうものだと思いますか?

清野:やっぱり、理性より感性を入口にしていることでしょうか。『こどもオレンジページ』では「食育」という言葉をあえて使っていません。食育はもちろん大事なことですが、言葉で聞くとちょっと重いし硬いので、多くの親御さんは「真面目な優等生をしなきゃいけないのかな」と感じてしまうと思います。ですから「こどもプロジェクト」では、食育の根底は食べることを楽しむことだと、堂々と伝えていきたいんです。そこが従来の“こどもと食”の考え方とは違うところかなと思います。



—食育はエデュケーションの視点でのアプローチですが、「こどもプロジェクト」ではまず食はエンターテイメントだと捉えて、そこにエデュケーションをミックスしていくというアプローチなので、スタートも違うのかなと思いました。

清野:そうなんです。食は絶対なんだけど、そこにワクワクがないといけない。

亀崎:そういえば、今『オレンジページ』のキャッチコピーは「暮らしに『おいしい』と『ワクワク』を。」と、“ワクワク”がついてますよ。

清野:そう思うと、やっぱりうちの会社は“ワクワク”なんだよね。

長谷川美保(以下「長谷川」):こどもが嫌いな食べ物があっても無理やり食べさせるのではなくて、楽しい経験で好き嫌いをなくしていってほしいよね。『こどもオレンジページ』も、そういう“ワクワク”を積み重ねていける本にできたらいいなと思っています。



和田:あとはやっぱり、「生きるチカラ」を大事にしていきたいです。勉強ができることとはまた違う、生きるチカラとはどういうことだろうとか、生きるチカラをつけるためにはどうしたらいいかということもしっかり打ち出していきたいですね。

長谷川:たぶんすべての親が望んでいるところですよね。生きるチカラさえあれば、頭がすごくよくなくてもきっと人生を切り開いていける。それを食の体験で培っていけたらいいなという私たちの想いが、読者にも響いているのかなと思います。



—お話を聞いていて、オレンジページさんは総じておうちのなかに“楽しい時間”をつくっているのかなと感じました。そのなかでは、コラボ商品のように外部との協業も必要になると思いますが、今後はどういう企業と組んでいきたいと考えていますか?

清野:私は行政と組みたいです。私たちが提案していることって、義務教育に取り入れたほうがいいと思うんですよ。楽しい食の時間をあたりまえに小学生のときから経験できるような仕組みがつくれるとすごくいい。たとえば給食の時間に『やさいーズ』を使ったレクリエーションを取り入れたり、キッチン実験室のようなことをやったら、嫌いなものを食べられるようになるかもしれません。

長谷川:コロナ禍なのでお友だちとおしゃべりできず、給食の時間がなかなか楽しめない今だからこそ取り入れられそうだよね。

亀崎:うちの子はこの春から1年生になり、コロナ禍での黙食になかなか慣れないようです。おいしく楽しく食べられるきっかけがちょっとあるだけで変わると思うので、数分でもいいからそういう時間があるといいなと、親として切実に思っています。

清野:企業さんとのコラボレーションに加えて、義務教育という根底のところを大きく変えていかないといけない。社会を変えるくらいの気持ちで、生きるチカラのあるこどもをたくさん育てていきたいです。

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